書き込みがある古書の価値

売れている本がよい本とは限りません。深い味わいがあり、自らの心と体に染み渡るような本であっても、絶版になってしまうことがよくあります。
そうした本を読もうとしたときは古本や図書館で読むことになりますが、最近はamazon(アマゾン)などで、古書が容易に入手できるようになりました。便利な時代です。一昔前であれば、東京でいえば神保町や早稲田の古本街を探さなければならなかったですから。
私の隠れた楽しみは、古本にある書き込みです。アマゾンでは、書き込みのある古書は値段が安くなっています。書き込みがなく、装丁の状態も良い、新刊に近い状態のものが高い価格になっています。
ほとんどの人にとって、書き込みがある古本は避けたいと思うのは自然です。しかし、書き込みというのは、前に読まれた人の「ひらめき」をメモしたものです。何気ない書き込みに、はっとさせられることがあります。
たとえば、最近読んだ古書の中に次のような書き込みがありました。
「大阪一代、東京三代、京都十代で認められる」
この書き込みって、けっこうおもしろい。
この本の前の読者が、著者と対話をしているようで、それを古書の読者である私が聞いている、ということです。これって、けっこう価値のあるものだと思います。
古本で売るときは、安くなるけれど、次の読者のために、本への書き込みをしていきます。