日本語が亡びるとき

ここ半年ほど、意識をして英語の書籍や雑誌を読み、CNNなどの英語放送のテレビを見て、iPodで英語を聞いていた。12月にある国際会議の小さなセッションで報告と座長を務めなくてはいけないからだ。日本語ならなんとかなる自信はあるのだが、英語でとなると……。
昔から不思議に思っていた。日本人は英語の勉強には熱心なのだが、世界の中で英語が得意な国民とはとてもいえない。書店に行けば英語学習の教材が溢れ、駅前には英会話学校が軒を連ねている。英語勉強法などの本ばかりが売れて、結局日本人の英語力の向上には至らない。かくいう私自身がそうだ。最近ではグーグル副社長の村上憲郎氏の「村上式シンプル英語勉強法」やら、かの猪口元少子化大臣のご主人である猪口孝氏の「英語は道具力」などを読んではみたものの、肝心の英語そのものの読み書きの量が少ない。
誰かが言っていたが、起業を志す人が起業の本を何冊も読んでいて、その本を読むことで満足してしまい、結局いつまでたっても起業できない、という笑い話がある。日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で
英語勉強法の本をいくら読んでも、英語は上達しない。勉強法にこだわるのは日本人の特徴のような気がしてならない。勉強法ブームは英語に限らず、ビジネス分野でもそうしたことは言えそうだ。
そんなこんなで、自分のおしりに火がついて、勉強法ばかりに目を向けずに英語そのものに目を向けて準備をしかけた矢先に、梅田さんのブログでの本の紹介を見た。http://d.hatena.ne.jp/umedamochio/20081107
日本語が亡びるとき水村美苗著(筑摩書房)である。
早速、ネットで自宅近辺の書店の在庫状況を調べ、クルマで10分ほどのところにある勝木書店で同書を購入した。ちなみに、同時に「日本の禍機」朝河貫一著(講談社学術文庫)も購入した。
あらためて書店のシーンを考えてみると、この10年で大きな変化が生まれている。ひとつはアマゾンに代表されるネット書店の登場、二つ目は小規模書店の消滅と大規模・郊外型店舗の隆盛、三つ目はネットを通じての店頭在庫状況情報の提供である。そして書店シーンとは違うが、書評の影響ということではネット上のブログなどを通じての書評の影響力が増大したということであろう。梅田氏や小飼氏などはネット書評でのインフルーエンシャーの代表である。
さて、肝心の水村さんの著書であるが、一章の「アイオワの青い空の下で…」から引き込まれた。水村さんが究極の漱石フリークとでもいう方であるということは、事前にネット上で知っていたこともあるが、なんとなく漱石の小説を彷彿とさせる一章のように感じられた。半年ほど前に漱石の「こころ」を読み返していたこともあり、水村さんのアイオワでの記述は「こころ」の中の江ノ島海岸のことを思い出させてくれた。
6章7章がこの本のクライマックスでもある。インターネット時代の英語と日本語。日本語が亡びるのではという危機感。著者は日本語の衰退に危機感を持つが、それと同時に日本人の英語力の低さにも危機感を持っている。
漠然とではあるが、私自身が最近感じていたことを水村さんは表現してくれた。
梅田さんの紹介と、それに対する弾さんの反応で、ネット上では盛り上がり、アマゾンのでのランキングがトップになっているようである。いちばん驚いているのは、著者の水村さんであろう。
私は、その話題に深入りせず、自らの足元の英語力向上に努めなければ…。