[コラム]群衆の叡智サミット2008spring

群衆の叡智サミット2008spring」(主催:テックスタイル)に聴衆として参加してきた。群衆の叡智は英語でいえば”Wisdom of Crowds”である。このブログが「ウイズダムダイアリー」を標榜する以上は、”Wisdom of Crowds”について深く考えておく必要があるでしょう、ということで2007年の第1回に引き続き参加をしてきた。
丸の内のビルのホールに集った200人弱の聴衆で、隣に座られた参加者から「群衆の定義というのはどのように考えればよいのでしょうかね?」と声をかけられた。私は次のように答えた。

それを定義することは重要ですね。二つの定義が考えられます。あるテーマに関して専門家と思われる人々の集団です。もうひとつは専門家ではなく、あまねく広い人々の集団です。
群衆の叡智が注目されているのは、私自身としては前者の専門家の集団の意見が重要だと思います。パネラーのNECの福岡さんは、NECの社内で部門以外の社員の意見を参考にしようという仕組みを構築して努力されています。あるテーマ、とくに新しい未来志向のテーマに関しては、現在の仕事のチームメンバーだけで新たな発想を生み出すには限界があります。それを社内の他部門に求めるというのは有効です。しかし、社内だけでも限界があります。社外、それもワールドワイドで意見を求めることが出来る現代においては、社内という枠すら取り払って外の声に耳を傾けるべきでしょう。
もうひとつのあまねく広い人々の集団というのは、あるテーマについて一般に専門家とは思われていない人々の意見を集めることですが、IBMビジネスコンサルティングサービスの伊藤久美さんが紹介されたIBMのJAMという72時間巨大オンラインブレーンストーミングなどはこれに当たるでしょう。IBMの社員だけでなくその家族も対象になっているようですから。

IBMビジネスコンサルティングサービスの伊藤さんは、Harvard Business Review, Sept,2007号の”Wisdom of Expert crowds”に言及された。未来予測の手法のデルファイ法の新展開にかかわる論文である。エクスパートクラウド、すなわち専門家集団の意見集約ということが重要だということだ。
伊藤直也さん(はてな)は、はてなブックマークソーシャルメディアとしての確立を目指して、情報集約の統計手法を検討中だという。その試みは大事だと私も思う。その手法がまだ、はてな社でも確立できていないということは、WOCビジネスの有効性が、まだまだ顕在化していないということでもある、と思う。
パネラーの生越さん(WASP)や吉岡さん(ミラクリナックス)、楠さん(マイクロソフト)、徳力さん(アジャイルメディアネットワーク)や、主催者の岡田さん(テックスタイル)のボーイング787をめぐる山口さん(駒澤大学)へのつっこみも楽しく拝聴させていただいた。
WOCサミット第三弾、それはアカデミズムでの探求と、実務での応用可能性検討の融合でしょう。次回開催に期待します。