僕らの憲法学

週刊文春宮崎哲弥さんのコラム「仏頂面日記77」で、日本国憲法に対する無理解が取り上げられていた。先の日教組プリンスホテルの紛争に関連して、読売新聞社説(2月3日朝刊)が「憲法で保障された「集会の自由」「表現の自由」が脅かされてはならない」と、あたかもホテル側に憲法遵守義務があるかのような批判を行っていることに対して、宮崎さんは「新聞の論説委員レヴェルでも憲法原理をまだ血肉化できていない」と厳しく指摘する。宮崎さんは言う。

断言するが、旅館業を営む一私企業に、憲法に規定された「表現の自由」だの、「集会の自由」だのを担保しなければならない義務などはまったくない!もう口が酸っぱくなるほどいってきたことだが、改めて確認しておくと、憲法の規定というのは、飽くまでも公権力に対する命令であって、私人(つまり公務員以外の国民や一般の私企業)の側にこれを遵守する義務はないのである。

宮崎さんも薦める『僕らの憲法学』田村理(たむらおさむ)ちくまプリマー新書で、憲法の条文とともに次のような記載がある。
僕らの憲法学―「使い方」教えます (ちくまプリマー新書)

「第九九条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う。」
つまり僕たち国民個人は憲法を守る義務を負う人のリストからはずされています。僕たちは、憲法をまもる義務を負っていないのです。これは、憲法が国民にではなく公権力担当者に対して、余計なことをしない義務、必要なことだけをしっかりする義務を課すための法であることの証です。

国民が憲法を定めて公権力をコントロールする考え方が「立憲主義」というもので、この憲法の基本が多くの国民に理解されていない状況では、憲法改正論議など出来るはずもないと思った。