見える化

企業などの現場で「見える化」運動が広がりつつある。日本のさまざまな現場において「現場力」とでもいうべきものが衰えてきていることの反省からである。
見える化』遠藤功(2005年、東洋経済新報社)は、経営コンサルタント会社ローランドベルガー社会長による見える化のテキストだ。

実績値や計画をグラフやチャートにし、ボードや壁に貼り出しさえすれば「見える化」をやっていると安易に考えているケースは実に多い。

と著者は警鐘を鳴らす。
「見える」という概念は、受け手の概念だ。受け手が見えるようにしなければ意味がない。ただ絵を描いて見せるのは「見せる化」ということなのかも知れない。「見せる化」は、供給側の自己満足である。

「見せよう」とする意思と、「見える」ようにする知恵がなければ、「見える化」は実現できない。

と著者は言う。そのとおりだと思うが、それだけでも足りないと思う。
受けての側の「見よう」という意思と、わずかながらの「見える」ための勉強(リテラシー)が必要だ。
・伝えたいという意思と、受け取りたいという意思
・伝える技術と、受け取る技術
伝え手と受け手のこうした意思や努力があってこそ、コミュニケーションというのは完成する。どれかが欠けてはコミュニケーションは成立しないと思う。
これは、仕事の場面でも、生活の場面でも基本的なことなのだが、ついつい忘れがちなことだ。
この本を読んで、ふと基本に立ち返ることが出来たような気がする。