エジソンはベンチャー起業家の草分け
もう買うのをやめよう、と思いつつ、駅の売店で週刊誌を買ってしまう。ゴシップ記事満載の週刊ポスト(小学館)で唯一安心して読めて、ためになるのが、齋藤孝さんの連載「賢者はかく語りき」だ。齋藤さんは、いつも学生に「尊敬する3人の賢者を持て」といっているらしい。ちなみに、ご本人が尊敬する3人は、ゲーテ、福沢諭吉そしてエジソンだという。
エジソンは六つないし七つの構想を同時に練って、ひとつのアイデアに疲れたら別のアイデアに移るという。そうすると、それぞれが結びついて大きなアイデアが偶然生まれることが多いという。
ところで、エジソンというと発明家と思いがちだが、単なる発明家ではない。エジソンはベンチャー企業家の草分けである。以前、Business Week誌のイノベーション特集でエジソンが次のように取り上げられていた。
電灯を発明したのは誰かと尋ねれば、多くの人は間違った答えをするだろう。それはエジソンだと。実は、白熱電球は他の人によって発明され、それを10年後に世に出したのがエジソンである。では、なぜエジソンが有名なのか。それは彼が電灯をその後に大衆に普及させたからに他ならない。エジソンとメンローパークのエンジニアチームは電力のトータルシステムを構築した。それには電灯のソケットに始まって、安全ヒューズや電線のネットワークまでが含まれる。こうしたトータルのシステムがあってはじめて白熱電灯というイノベーションが達成されたのである。エジソンはたった一点において先行者と戦った。それはイノベーションの全体プロセスのマネジメントという一点である。
モノ単独ではなく、システム全体を構想し、それを実現したエジソンの力は偉大だ。
エジソンについての本では、『快人エジソン』浜田和幸(日経ビジネス人文庫、2000年)がコンパクトで面白い。