生きる

kohnoken2005-10-09

黒澤明の名作「生きる」を日本映画専門チャンネルで観た。
昭和27年の作品であるが、人の心や縦割り組織の問題というのは変わらない。志村喬演じる主人公渡辺は市役所の市民課長、市民から要望のあった公園建設を自らが旗振り役になり、公園課、総務課、助役などを動かし実現していく。映画の中では「プロモーター」というセリフで呼ばれていた。今で言う、プロジェクトマネジャーともいうべき役割だが、正式に任じられたマネジャーではなく、影の立役者とも言うべき位置づけであるのがこの映画のミソである。
映画自体は、やや冗長な感じがした。葬式の場面は、やや説明がくどいように感じる。志村喬の演技は、今の時代からするとややオーバーな感じがした。
しかしカメラワーク、とくに光と影の使い方などは黒澤映画の面白さだ。
今の時代も、お役所仕事というのは社会の批判の的である。しかし、あの戦後の混乱の時期であるならばこの映画のようにユーモアですまされたが今は違う。今、このテーマを映画にするには問題がシリアスすぎる。ユーモアで片付けられないだろう。
人間の心理や社会の仕組みというのは進んでいるように見えて、あまり進んでいないように感じる。
(画像)完成した公園でブランコに乗る志村喬http://homepage2.nifty.com/e-tedukuri/ikiru.htm