[フラワー&グリーン]面白さ急には見えぬ薄哉(鬼貫)

仙石原のすすき

俳句というのは季節の自然と心情をわずかな言葉で凝縮をするものだ。ものごとの本質をつかんだり新たな視点でものを見るということが重要で、この要約力は他の分野にも共通するものだと思う。以前ある会合で、俳句作りの遊びをしたことがある。20名ばかりが俳句を即興で作り、お互いに見せ合いながら点数を付け合った。そのときの最も高得点だったのは、彫刻家だった。俳句というのはモノづくりの原点のような気がしたことを思い出す。
秋は俳句の対象となるものにあふれている。たとえば「すすき」。

面白さ急には見えぬ薄哉(鬼貫:おにつら)

この句は、芭蕉と同時期に生きて「行水の捨てどころなき虫の声」などで知られる上島鬼貫によるものである。俳論「独こと」のなかで彼は次のようにいう。

薄はいろいろの花をもてる草の中に、ひとり立てかたちつくろはず、かしこらず、こころなき人には風情を隠し、心あらん人には風情を顕す。只その人のほどほどに見ゆるなるべし。

伊丹の酒造家の家に生まれ、後に筑後の三池藩の経済担当顧問などを勤めた鬼貫の人と自然を見る目の斬新さは、時代を超えて迫ってくるものがある。
箱根・仙石原などの群生するすすきも素敵だが、道端に目立たず、秋風になびくすすきにも目を向けよう。
(参考資料)名句で味わう四季の言葉 中村裕 小学館 2003年
(画像)箱根・仙石原のすすきhttp://apple3.web.infoseek.co.jp/ashigara/hana3/susuki.htm