東京物語

kohnoken2005-08-29

なおるよ
なおるなおる
なおるさ

このセリフのシーンを観たいと思っていて、なかなか観れなかった映画「東京物語」をようやくレンタルDVDで観た。26日の日経新聞の「春秋」欄は、注目の選挙区である広島6区にある尾道が舞台になった東京物語について触れていた。これがきっかけでこの映画を観ておこうと思った。
以前、たしかNHKテレビで小津安二郎監督生誕100周年ということで特別番組が放映された際に、上記のセリフの心理的な意味合いが解説されていた。急に危篤となった妻に向かって投げかけた笠智衆の言葉である。その解説は正確には覚えていないが、最初の「なおるよ」は妻への励ましの言葉、続く「なおるなおる」は自分自身に納得させる言葉、最後の「なおるさ」は神にでも祈るような言葉、といったような解釈であったと思う。
残念ながら、実際の映画からは、そこまで深い読みを私自身が感じ取ることはできなかった。感性が鈍化しているのかもしれない。
昭和28年の作品でありながら、おそろしいまでに現代の家族の絆の崩壊を予言している。
東京で働く長男は医師、長女は美容院経営者、外から見れば立派な子供たちということになるが、それぞれ子供たちには生活があり、何十年ぶりで故郷の尾道から東京を訪れた老夫婦の親に対して、二人の子供たちは親を必ずしも歓迎せず、厄介者扱いをする。それに対して原節子演ずる戦死した次男の嫁だけが、この義理の両親に暖かく接する。
居心地の悪いまま尾道に帰った直後、老夫婦の妻が急死してしまう。
この映画に対しては、さまざまな解釈がなされている。あと二、三度じっくりと見直してみたいと思った。
それにしても原節子と言う女優は、日本映画界ナンバーワンというだけあって圧倒的な存在感がある。
(画像)http://www.geocities.jp/yurikoariki/ozu