『イチロー262のメッセージ』

勝負の場で力の差を見せつけるのがいちばんです。
野球に限らず何でも実力の差を見せてしまえばいいと思います。

イチロー 262のメッセージ
女子プロゴルファー宮里藍選手が、空港の売店で何気なく購入したイチローの本のこの言葉を試合の最終日に頭に叩き込んで臨んだ結果、圧倒的な差で優勝したというのは、あまりにも有名だ。藍ちゃんの記者会見での発言以来、書店からイチローのこの本が消え、緊急増刷されたという。
イチローは短いフレーズで自らの考えを語らせたら右に出るものはいないほどの言葉の使い手である。経験と結果に裏打ちされた言葉であるだけに重みが違うのは、言うまでもないが自らの考えを判りやすく、かつ刺激的に語れる人間は多くはいない。どこかの国のトップもワンフレーズ総理などと言われている様であるが、イチローとはレベルが違いすぎる。本来、高度な言葉の使い手であるべき政治家の貧困さは目をおおうばかりだ。
オフシーズンにBSの番組で久米宏と対談を行ったが、あの久米宏イチローの言葉に圧倒されていたのは面白かった。長年キャスターのトップを走ってきた言葉のプロがイチローの前では押されっぱなしであった。もちろんイチローを引き立てないといけない役回りではあったのだが、何ともイチローの言葉の力が圧倒していた。再放送を含めて結局3回も見てしまったが、何度見てもイチローの的を得た発言に感心させられた。
そのイチローデトロイトでのオールスター戦でファン投票4位で次点に終わり、監督・選手推薦で選ばれた。昨年262本のヒットという大リーグ記録を打ち立てながら、ファン投票3位に入らなかったことについて「自分には何かが足りない」と答えていたイチローが印象的であった。
そして、国別対抗ホームラン競争である。イチローは頑なに参加を拒んだという。当然といえば当然だ。イチローはホームランバッターではないし、もともと急遽今年から採用されたこの国別対抗のホームラン競争というのはおかしい。ファンの多くは国別対応などは望んでいない。出身国にかかわらずホームランバッターの饗宴を従来どおり見たいというのがファンの希望であるはずだ。大リーグ機構の世界戦略という思惑から行われるのであるが、ファンの希望とのギャップは大きいように思える。イチローが参加を拒んでも誰もファンは非難しないだろう。
しかしだ。
イチローは、それでもホームラン競争に出てほしかった。イチローは感じていたはずだ。「自分には何かが足りない」と。その何かがこのホームラン競争で打ち出せたかもしれない。ホームラン競争に勝利することで。その時、新たな「イチロー伝説」が生まれたかもしれない。試合ではホームランは少ないが、もともとバッティング練習などではホームランを連発しているのは、選手たちの間でも有名だ。打つ気になれば打てると本人も言っている。
「力の差」を見せつけてほしかった。その時、全米の聴衆や選手たちはイチローの秘めたパワーに脱帽をするはずだ。その驚きのシーンを見たかった。未踏のステージに入るイチローを見たかった。
イチローが進化すればするほど、ファンの要求も常識を超えた領域に入っていく。それに答えてくれるイチローが見てみたい。