[書評]『プレゼンテーションの極意』

医学博士でデザイナー、名古屋市立大学大学院芸術工学研究科の教授でもある川崎和男氏の近著『プレゼンテーションの極意』(ソフトバンクパブリッシング)を読んだ。久しぶりになるほどと思わせる部分が満載の本であった。
とくに、プレゼンテーションに最も必要なことは「わがまま」と「誠実さ」だというところが面白かった。デザイナーは「未来」を作るのが仕事である。プレゼンテーションは未来を創り、夢を実現しようとする人にとって必ず通らなければならない場面である。ここで勝負が決まる。その際に大事なのはプレゼンテーションのテクニックではなく「わがまま」と「誠実さ」だというのである。

「わがまま」とは、自ら思ったことを積極的に口に出し、自分の思い通りにコトを進めていこうとする心意気に他ならない。

なんとしても、その「わがまま」を世間の人に認めてもらい、具体化するまで精力的に動き回ろうとする志となる。

「発想」の段階に奔放な「わがまま」がないと、いくら技巧的にすばらしいプレゼンテーションであっても、心をひきつけられる何かが欠落してしまうと思うのだ。

要は、自分を大事にすること、自分を信じること。これが「わがまま」を持つ人間すべてに欠かせないことである。

凡人が発する言葉なら問題だが、川崎氏の「わがままのススメ」は説得力がある。
自分自身、この「わがまま力」とでも言うべきもののパワーが落ちないようにしなければいけないと思った。
また「わがまま」と同時に「誠実さ」がセットになっていない夢の実現は難しいと川崎氏は言う。誠実さは言葉を超えて人の心を打つのだという。
川崎氏の「わがまま」と「誠実さ」は子供の頃の人格形成の時期につちかわれたものらしい。川崎氏のお母様は、何でも「わがまま」を許してくれたという。それだけに間違ったことはできないと逆に心が引き締まったともいう。また川崎氏の「誠実さ」は、京都の宮大工のリーダーで、誠実すぎて人にだまされることの多かったおじい様の影響が強いということのようだ。
これ以外にもマイクロソフトの「パワーポイント」の問題点指摘など、プレゼンテーションのテクニックにも触れられており、たいへん参考になった。