[書評][映画]神奈川県民も知らない地名の謎

浅間台、南太田、伊勢佐木町、黄金町、酒匂川、腰越
この地名キーワードに共通するものは何か?
黒澤明監督「天国と地獄」に登場する場所である。
浅間台は横浜市内を見下ろす映画のメイン舞台となった主人公の権藤邸があった場所。
南太田は犯人がアパートから見上げていた撮影のために使った場所。
伊勢佐木町は、犯人が権藤にタバコの火を借りる場所。
黄金町はヘロインの効果を試すために犯人が入り込んだ場所。
酒匂川は、権藤が特急こだまのトイレの窓から現金の入ったカバンを投下した場所。
腰越は、犯人が使用した盗難車についていた泥から導き出された漁協のあった場所。
ちなみに、この映画の想定している季節は夏であるが、なぜか描かれている富士山には雪がある。これは実際に撮影したのが冬であったためと後に話題になった。

神奈川県 県民も知らない地名の謎 (PHP文庫)

神奈川県 県民も知らない地名の謎 (PHP文庫)

セブンイレブンで見つけた文庫本「神奈川県民も知らない地名の謎」は、面白かった。地名の由来というのは諸説あるので、どれが本当かというのは確証できないが、神奈川県内の地名の由来を解説していて、神奈川県民としては身近に感じる。
たとえば、前述の伊勢佐木町。ここは青江三奈伊勢佐木町ブルースで全国区になった地名である。

第一の説は元・神奈川奉行であった佐々木濃守と合原伊勢守の二人で開発したことから。第二の説は伊勢出身の佐々木某がそば屋「佐々木庵」を開業し繁盛したから、など。

酒匂(さかわ)は、

「サカ(酒・逆)」は本来「サク(裂く)、えぐる、くり抜く、決壊する」という意味で、「勾(ワ)」という文字には「カギ、マガル」という読みもある。…「逆」が「酒」に、「勾」が「匂」に変わったのは、地名の表記が縁起がいいもの、美しいものに変えられたため。

意外であったのは小田原の地名の由来。

江戸時代後期、1841年に編纂された「新編相模国風土記稿」には「小田原」の地名が「小由留木(こゆるぎ)」という文字の草書体を誤読したことに由来する、という説が紹介されている。

その他、神奈川県内各地の由来が紹介されている。

もともとは「粟船」か「青船」だった【大船】
三方を海に囲まれているから【三浦】
多摩丘陵に登りにかかる場所【登戸】
村の中心にお堂があったことから【辻堂】
川の流れが綾をなすように見えた【綾瀬】
……

身近な場所を見直すことは楽しい。
(過去エントリー)http://d.hatena.ne.jp/kohnoken/20080102