人生の鍛錬
小林秀雄の言葉を集めた新書である。
人間は、憎悪し拒絶するものの為には苦しまない。本当の苦しみは愛するものからやって来る。
モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。
上手に語れる経験なぞは、経験でもなんでもない。はっきりと語れる自己などは、自己でもなんでもない。
こうした言葉は胸に突き刺さってくる。
ふと、微笑んでしまう言葉は、次のものだ。
あるとき、娘が、国語の試験問題を見せて、何だかちっともわからない文章だという。読んでみると、なるほど悪文である。こんなもの、意味がどうもこうもあるもんか、わかりませんと書いておけばいいのだ、と答えたら、娘は笑い出した。だって、この問題は、お父さんの本からとったんだって先生がおっしゃった、といった。・・・おやじの面目まるつぶれである。教育問題はむつかしい。